朝霧橋を渡った正面にはかって、宇治神社の朱に塗られた鳥居が建っていました。
平成30年(2018)9月4日に近畿地方を横断した台風21号により、鳥居が倒壊しました。
現在は年内の完成を目指して修復工事が行われていますが、狛犬の右横に聳える
「兎楽の樹」と称される楠は災難を免れたようです。
菟道稚郎子(うじのわきいらつこ)皇子がここを訪れた際、先導してきた兎が、
この木の下で楽しく戯れたとされ、宇治神社を象徴する楠と説明されています。
宇治神社では兎は神使いとされ、境内には所々に兎像が祀られています。
参道の左側に社務所があり、社務所前には狛犬が祀られています。
参道の右側にある手水舎で最初の兎に出会えますが、
鳥居の修復工事中は鳥居から拝殿までの通行は禁止されています。
参道の石段を登った正面に拝殿があります。
鎌倉時代の建保3年(1215)頃に建立され、
かっての当地の地名・桐原から「桐原殿」と称されています。
拝殿の右奥に神楽殿があります。
拝殿の左側には参集殿があり、ここで御朱印の授与が行われています。
本殿
かってこの辺りに第15代・応神天皇の離宮・桐原日桁宮(きりはらひけたのみや)があり、
天皇の皇子・菟道稚郎子命が宮居(みやい)を構えた所とされています。
本殿前には「知恵の輪」があります。
菟道稚郎子命は、幼い頃から聡明であったことから、学業の神様として崇められています。
本殿前の石灯籠には「離宮八幡石灯籠 元和三年(1617)九月吉日」と刻字されています。
現在の本殿は鎌倉時代初期に建立されたもので、国の重要文化財に指定されています。
殿内中央には菟道稚郎子命の木像が安置されています。
木造は等身大の衣冠、笏を持つ坐像で、平安時代中期の作とされ、
国の重要文化財に指定されています。
また、鎌倉時代作で市の文化財に指定されている、
木造狛犬一対が宇治市歴史資料館に寄託されています。
阿形像は像高80.9cm、吽形像は像高87.7cmで、狛犬の作例中では最大級に属します。
祭神の菟道稚郎子命は、百済から来朝した阿直岐(あちき)と王仁(わに)を師に
典籍を学び、父・応神天皇から寵愛されました。
王仁は『論語』『千字文』すなわち儒教と漢字を日本に伝えた人物とされています。
応神天皇40年(309)1月に菟道稚郎子命は皇太子となりましたが、
翌年天皇が崩御されました。
菟道稚郎子命は儒教を学んだことから、天皇には異母兄の
大鷦鷯尊(おおさざきのみこと=後の仁徳天皇)が、天皇に相応しいとして即位しませんでした。
菟道稚郎子命は菟道に移り、現在の宇治神社または宇治上神社の地に
菟道宮(うじのみや)を建てて住し、大鷦鷯尊と3年に亘って皇位を譲り合いました。
そして、永らくの空位が天下の煩いになると思い悩み自ら果てました。
313年、大鷦鷯尊が第16代・仁徳天皇として即位すると、菟道宮跡に祠を建て
菟道稚郎子命の神霊を鎮祭したのが宇治神社の始まりとされています。
その後、平等院が創建されると、宇治神社は宇治上神社と共に平等院の鎮守社となりました。
かっては平等院に参拝する前に宇治神社に参拝するのが習わしとなっていました。
説明書きには「宇治」の地名について触れられていますが、
「宇治」の地名が定着するようになったのは平安時代とされています。
『日本書紀』垂仁天皇紀・仲哀天皇紀・神功皇后紀には既に「菟道河(宇治川)」の記載があり、
菟道稚郎子命は地名を冠したと推察されています。
また、南方熊楠(みなかたくまぐす)は、菟道の由来を
「兎の群れが通って道になった」との説を立てています。
本殿玉垣内の右側には「寝そべり兎」の像が祀られています。
本殿の右側に伊勢神宮と橿原神宮の遥拝所があります。
宇治神社ではここをパワースポットし、「願い兎」の像が祀られています。
遥拝所の奥には、手前から春日大社、日吉神社、住吉大社の末社群があり、
春日大社の社殿は京都府の文化財に指定されています。
本殿の左側には、手前から廣田神社、松尾大社、高良神社、
伊勢神宮の末社群が並んでいます。
松尾大社には市杵島姫命、高良神社には武内宿禰、伊勢神宮には
天照大御神、国常立命が祀られています。
境内の右奥には招魂碑があります。
招魂碑の奥にフェンスがあり、土手に登り、フェンス越しに宇治発電所の全景を見渡せます。
レンガ造りのこの建物は、土木学会選定「現存する重要な土木遺産2800選」
Aランクに選定されています。
境内の裏側から宇治上神社への参道に出られ、参道との角には『源氏物語』
「宇治十帖」第4帖の早蕨(さわらび)の古跡があります。
宇治の中君(なかのきみ)が詠んだ「この春は誰にか見せむ 亡き人の形見に摘める
嶺の早蕨」の和歌に因んで名付けられました。
父・八の宮、姉の大君(おおいきみ)を亡くした中君が、その心情を詠まれたものだと思いますが、
この参道は「さわらびの道」と名付けられ、先へ進むと仏徳山への登山口があります。
春には仏徳山で蕨が摘めるかもしれません。
更に「さわらびの道」を進んだ先には源氏物語ミュージアムがあります。
宇治上神社へ向かいます。
続く
にほんブログ村